「ちいさいおうち」バージニア・リー・バートン文・絵 石井桃子訳
あなたはどんなところに住んでいますか。便利な街の中のマンションでしょうか。静かな住宅地の一角でしょうか。あなたが住むずっと前、そこはどんなところだったのでしょう。
私が住む街も、今は大きな道がすぐ近くにあるけれど、「ちょっと前までは、ふくろうがないていたんだよ。」と、近所のおばあさんが教えてくれました。
この本「ちいさいおうち」が書かれたのは、もう60年以上も前のことです。でも、今まで静かだったところがどんどん開発されて、大きな街になっていく様子は最近のことのようですね。私たち人間にとっては便利になっても、「おうち」にとっては居心地が悪いのでしょう。そして、私たち人間も、本当は便利なだけでは少し心が疲れてしまうのかもしれません。
外出をしないで家にいましょう、と言われている今の時期、生活はたいへんかもしれないけれど、ちょっと自分の心を休ませるには良い時間です。
この作者の繊細な絵は、よく見ると、いろいろな場面が描かれています。小川が流れ、夏は池で泳ぐ子供、秋はりんごの収穫、街が大きくなったら人々はせかせか歩き、高いビルは雲の上につき出ています。おはなしとともに、ひとつひとつの絵をじっくりと見てほしい、古いけどちっとも古くない絵本です。