「日本の川 たまがわ」 村松 昭さく

笑福(わふく)の本拠地は調布にあります。調布から電車で少し下ると、多摩川を渡りま
す。ゆうゆうとした静かな流れ、遠くに見える富士山。電車の中からは、座って見るより
ドアの近くに立って眺めるほうが好きです。
多摩川のもっともっと上流はどんな山の中にあるのかな…
多摩川をずっとずっと下って行ったら、羽田空港まで行けるはずだよね…
この長い川の最初の一滴から川と海のさかいめまで、全部見てみたいものですが、なかな
かそうはいきません。
そこで、この本です。作者の村松昭さんは、鳥瞰絵図作家。鳥瞰図(ちょうかんず)とい
うのは、飛ぶ鳥が見たように、上空から見下ろした絵や地図のことです。この本ではとて
も正確に、まさに自分が鳥になったかのように、多摩川の源流から河口までを眺めること
ができます。ダムや電車やたてもの、さらにそこに住んでいる鳥や植物も紹介されていま
す。
私が電車に乗って渡る京王相模原線の鉄橋もちゃんと描かれています。少し上流に行くと
ニセアカシアの林が、少し下流に行くと松林があることもわかります。
そして、ちょうふし(調布市)、ふだ(布田)、そめち(染地)という、布を織り、染め
ていたということを思い起こさせる地名も出ています。よくよく見ると、ふだ(布田)と
いう地名が川の向こうとこっち(東京都調布市と神奈川県川崎市多摩区)の両方にあると
いうこともわかります。なんでだろう? ふふふ、この本からさらに興味が広がりますね

ふつうの地図を見ても、その場所の暮らしはなかなか想像できませんが、こうして絵にな
っているとよくわかります。巻末の索引から、気になる地名を探してみるのも楽しいでし
ょう。
この「日本の川」シリーズにはこのほかにも、「あらかわ・すみだがわ」「よどがわ」「
ちくまがわ・しなのがわ」「ちくごがわ」「いしかりがわ」「よしのがわ」があります。